Zo DIgitalでは、日本で最も影響力のあるSEOの専門家に、2021年の予測とトレンドを聞いてみました。EAT、コアウェブバイタル、UX、英語と日本語での市場の違いなど、ホットなトピックをご紹介しています。
今回参加いただいた5人のスペシャリストには、毎日何千人もの人に読まれているSEOブログの鈴木謙一氏、英語のSEOに関する出版物で数多く引用されているハント肇子氏、ベストセラーのSEO本を執筆した松尾茂起氏、日本で最初のSEOエージェンシーを立ち上げた渡辺隆広氏などの専門家が含まれています。素晴らしい実績を持ったSEOの専門家たちです。
私たちは、以下のトピックについて意見を聞いてみました。
Q1. この2年間で日本のSEOはどう変わったのか?
Q2. 2021年に最も効果的なSEO対策と技術は?
Q3. 日本語SEOと英語SEOの主な違いは?
鈴木 謙一 氏(海外SEO情報ブログ 運営者)
海外SEO情報ブログ 運営者
株式会社Faber Company 取締役Search Advocate
正しい SEO をウェブ担当者に習得してもらうことをミッションに掲げている。個人運営の海外SEO情報ブログは、日本では最も有名な、SEO に特化したブログの1つ。 Faber Companyでは、検索関連のカンファレンス/イベントの取材やセミナーでの講師が主な役割。海外カンファレンスでの登壇も経験している。YouTube で、SEO の情報発信も始めた。Google公式ヘルプコミュニティのプロダクトエキスパートとして認定を受けており、Google社員とのつながりも深い。日本の検索セントラルヘルプコミュニティでは、日本人初のプラチナエキスパートの資格を得た。
いわゆるYMYLと呼ばれる領域において、ここ数年は高いE-A-Tが要求されるようになってきた。この傾向は日々を追うごとに(=コアアップデートが実行されるたびに)強まってきている。日本のGoogle検索も例外ではない。
E-A-T、つまり
をいかに高めていくかがサイト運営者の中心的な課題になってきた。
別の話題として、ローカル検索の重要性を認識するビジネスが日本でも増えてきたように感じる。海外のカンファレンスでは必ずと言っていいほどローカルSEOをテーマにしたセッションがあるし、ローカル検索に特化したカンファレンスもあるほど。
日本でもローカルSEOのスペシャリストが活躍し始め、有益な情報を発信するようになってきた。通常のウェブ検索においてもユーザーの物理的な居場所が影響する場合がある。ローカルSEOの重要性はさらにホットなテーマになっていくと予想する。
E-A-TやローカルSEOの重要性もさることながら、個人的に注目したいのはユーザー体験(UX: User Experience)だ。ページエクスペリエンスシグナルとして、次の4つのUX要因をGoogleはランキングシグナルに現在利用している。
ここに、コアウェブバイタルが今年の 5月に加わる。
ランキング観点では、ページエクスペリエンスシグナルはさして強い影響力を持つものではない。しかしながら関連性や品質とともに、検索においてUXが無視できないファクターになりつつあることは確かだ。
SEOに大きな影響があろうがなかろうが、また直接の影響があろうがなかろうが、UX改善には積極的に取り組んでいくべきだ。UX改善というのはページエクスペリエンスシグナルの5つに限った話ではなく、ユーザー体験に関わるあらゆる要素だ。ユーザーを喜ばせることに成功すれば、それは検索エンジンの評価にも良い影響を与えるだろう。優れた体験は権威性や信頼性の向上ばかりではなく知名度の向上にも役立つからだ。
大きな違いがあるとは思わないのだが、しいていえば、Google検索の少なからぬ新機能は米Googleから導入が始まる点だ。もっと言えば、米Googleでしか提供されない機能もある。
対応可能なものに関しては、導入を見込んで先手で取り組んでおくとライバルにスタートダッシュで差を付けられるかもしれない(とはいえ、導入されなかったら無駄骨になってしまうが)。
Motoko Hunt 氏 (President, International Search Marketing Consulting)
1998年にAJPRを設立して以来、日本とアジアを中心に世界各国の企業にオンラインマーケティングサービスを提供している。アジアと日本市場の豊富な知識に基づいたSEO/SEMコンサルティングサービスを得意とし、世界的に人気のある多国籍ブランドの検索マーケティングキャンペーンにも大きな影響力を与えており、高い評価を得ている。
また、国内外のSEOとSEMについて、オンラインメディアや雑誌などにも執筆。世界各地で開催される検索会議での講演や、Global Search Awardsなどの審査員を務めている。
クライアントサイドのSEOに対する知識と技術が高まり、長期的にも効果があるSEO対策を取るようになってきたと感じます。以前のようにリンク構築に頼る一時的なSEO対策が減ってきたのも、クライアントサイドがSEO会社からの提案を鵜呑みにしなくなってきたからではないでしょうか。
一方で、SEOの担当をおく余裕がない会社が、どんどん取り残されていく現実があります。欧米と比べ、日本では都市部と地方でSEOの取り組みに大きな差があるように感じていますが、これは残念ながらここ数年でそれほど改善されていないように思います。
企業がSEOへの投資を続けるには、SEOがビジネスの成功に貢献する必要があります。キーワードのランクや訪問者数だけで効果を測らず、ビジネスの成長に直結した目標を持ったSEOプロジェクトの構築が必要です。例えばコンテンツを作成するなら、どういった内容のコンテンツが、なぜ必要なのか、データで理由づけできることや、サイトのデザインを変えるのなら、今のデザインのどこに問題があり、どう改善するのかをまず明確にしないと、ROIにつながりません。特に2021年にはCWVの影響を受け、サイトをリニューアルするところが増えてくると思いますが、クローラーやサーバーを理解した上で行わないと、見た目は良くても改善されたとは言えないサイトになってしまいます。
また、サイト内でのコンテンツの流れや、UXなどもSEOの最終的な目的達成に大きく影響してきます。そういった意味でも、サイトのユーザーを理解しているクライアントとSEOを提供する側のチームワークが必要になります。
日本も欧米も、GoogleやBingなどSEOの対象となる検索エンジンは同じなので、技術面でのSEOは同じだと言えますが、差をつけるのはユーザー(顧客)です。検索で求めている情報に違いがあったり、サイトで取る行動に違いがあります。欧米のサイトがコンテンツを日本語に訳しても中々日本で成功できないのは、このユーザーを理解したSEO対策が取れていないからです。
渡辺 隆広 氏(アイレップ SEM総合研究所)
日本初のSEOエージェンシー「E-Promote」を共同設立し、23年以上にわたり検索マーケティングの第一人者としての経験を積む。技術的なバックグラウンドとオンラインマーケティングの専門知識をベースに、急速に変化する検索マーケティングに特化したデジタルマーケティング業界の研究に多くの時間を割き、クライアントの目標達成のために日々研究に励んでいる。
アドテック東京、SEO/コンテンツマーケティング関連のカンファレンスにおいて、パネリスト、講演者、プレゼンターを務め、検索マーケティングに関する著書も多数。SEM研究所を主宰し、クライアントと検索エンジン企業を支援するための戦略的パートナーシップを構築している。
「テクニカルSEO」「UX/UI」「コンテンツ戦略(Content Strategy)」の3点からお話します。
第1にテクニカルSEOについて。私は主に大規模サイトのSEOプロジェクトにかかわることが多いのですが、HTTPS導入やページ読込速度の改善、あるいはAMPや構造化マークアップを新たに導入する企業は着実に増えた印象を持っています。近年、Googleがデベロッパー向けの情報発信を通じた啓蒙を続けたことで、エンジニアが興味関心を持って積極的に取り組み始めたことも一因だと考えています。今年は Core Web Vitalsがランキングシグナルに導入されますし、この流れは継続すると予想します。
第2にUX/UIについて。Googleコアアップデートの影響で大幅な検索順位下落を受けた企業が、検索トラフィックを改善するためにUX/UIの改善にも積極的に取り組むようになりました。たとえばAbove the foldでの情報掲示方法や、(情報一覧ページにおいて)ページあたりに表示する情報数は、実際に導入してから後日Web解析レポートを見て判断する必要があります。以前ならそのテストを提案しても断られることが多かったのですが、近年は趣旨を理解して取り組んでもらえる企業が増えたと思います。実際、ウェブ利用者のニーズにあわせて画面設計を変更したあとに検索トラフィックの改善傾向がみられたケースもあります。
最後にコンテンツ戦略について。詳細な説明は割愛しますが、日本のSEO市場は、長らく(2010年まで)Googleではなく Yahoo! JAPANが最大の検索シェアを持っており、何よりも検索順位1位が重要視され、外部リンク(Paid Links含む)中心の国でした。そうした事情から、Googleがパンダアップデートを発表した時点で、コンテンツを有している企業は皆無といってもいい状態でした。
パンダアップデート以後、日本企業もコンテンツ制作に取り組み始めましたが、2017年頃までの長い間、その生み出されるコンテンツの大半は低品質 (low quality content with little value) なものでした。しかし直近2年に限れば、この状況は変化しています。
大手企業に限れば、クラウドソーシングで素性も専門性もわからない誰かに適当に記事を作らせるケースは減り、代わりにコンテンツ制作を専門とする企業や、制作を希望するトピックに明るい専門ライターに依頼して適切なコンテンツを発信しようという変化は見られます。しかし、日本はまだテキストで作ることに固執している悪い慣習も残っています。本来は、動画やイラスト、4コマ漫画など、オーディエンスと届けたい価値にあわせて適切なデザインと形式を選択するほうが、中長期的に検索流入の増加も期待できるに違いありません。
私は20年以上、日本語と北米(英語)のSEOの仕事をしてきましたので、その観点から日本固有の事情について前置きをしてから、2021年のSEOの話をします
日本企業、特に大企業は、ジョブローテーション(一定期間ごとに部署異動)で担当者が定期的に入れ替わるため、必ずしもウェブ担当者が必要なデジタルマーケティングの知識や技能を有しているわけではありません。SEOを例にとると、外部の広告代理店やWeb制作会社等にすべてお任せする傾向があります。それゆえに、欧米の同等企業と比較すると、戦略に一貫性がなく、短期的な視点で、本質よりも小手先の手法で成果を求めてしまいがちです。
上記の話を踏まえて、日本でもっとも効果的なSEO施策とは、第1にユーザーのほうを向いて忠実にサイト運営を行っていくことと、第2に検索以外のチャネルを積極的に活用することです。
1点目は、UXの話とコンテンツの話に分けられます。近年「ユーザーにとってよいサイト(コンテンツ)に注力しましょう」という話が繰り返されますが、日本は企業の規模を問わずこのルールに従わずに、ただひたすらGoogleのための低品質なコンテンツを作り続けています。つまり、真面目に、ユーザーが求めるニーズや体験を理解して、それをコンテンツのデザインや情報、形式に落とし込み、継続的に情報発信するだけでもGoogleからの評価を高め、検索流入の増加につなげることができます。
UX(画面設計)は、ようやく日本の企業も取り組み始めたとはいえ、前半で触れた通りすべての作業を外部企業に委託することが多いため、課題の認識から改善の実行まで非常に多くの時間を費やします。つまり、他社よりもいち早く取り組む組織体制を整え、基本に忠実に、検索体験を高めることを念頭に改善を加えていくことも、有効でしょう。
2点目は、WebサイトのE-A-T (Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness)を改善するためには、検索チャネルだけでなく、ソーシャルや広告など他のチャネルも積極的に活用し、オンラインの露出を増やすことは有効です。しかし、日本でこうした取り組みはまだ少数派です。日本企業のウェブ担当者はこうした横断的にデジタルメディアを活用することに慣れていないことが原因です。
個人的な意見ですが、日本のSEO市場は欧米と比較すると数年、遅れています。それゆえに、英語圏でベストプラクティスとして定着していることが、日本では実践されていないことが少なくありません。つまり言語の違いがあっても日本ゆえに特別に有効な施策があるわけではありませんが、同時に基本に忠実に行うこと自体が日本市場のSEOで有利に働く可能性が高いともいえます。
日本語に限らず、多言語サイトのSEOで大切なことは相手の文化を理解することと、単純に言語を翻訳するのではなく、その相手の文化にあわせて表現することです。今回は日本語特有のSEOの問題について、言葉の問題に触れます。
日本語は漢字(kanji)、ひらがな(hiragana)、カタカナ(katakana)の文字を使います。同じことがらを指す表現がたくさんあり、同じ発音でも全く異なる意味を持つこともあります。
たとえば、英語の「dress」 は日本語で「ワンピース」といいます。しかし、(そのファッションの意味で)検索するとき、日本人の多くは「ワンピ」と検索します。日本語直訳であるワンピースと検索する日本人は、マンガの ONE PIECE(a japanese manga)を探している可能性が高いためです。
また、smartphone も日本語では「スマートフォン」「スマホ」「スマフォ」という表記があります。Smartphone device そのものを指すときは「スマートフォン」と表記しますが、Smartphone case のときは「スマホ」という表記を使うことが多いです。
2021年現在、Googleの類義語(synonym)を扱う技術が発達したことで、こうした表記の違いがSEOにおよぼす影響は相対的に小さくなっています。しかし、ウェブページに記述する表記の違いは、それを読む日本人の行動 — たとえば検索結果でのクリック率やページの閲覧行動 — に影響するため、適切な言葉を選択しなければなりません。
松尾 茂起 氏(株式会社ウェブライダー代表)
京都市在住。株式会社ウェブライダーにて、検索エンジンからの集客を軸としたWebマーケティング全般のコンサルティングを手がける。数多くの企業の商品価値を独自の切り口でコンテンツ化し、認知・集客から顧客との関係性構築・ブランディングまで貢献。著書である沈黙シリーズ(『沈黙のWebライティング』『沈黙のWebマーケティング』)は多数の読者から支持され、電子版を含めシリーズ累計15万部を超えるベストセラーに。
2年前から見られる傾向ですが、E-A-Tが重視され、責任をもって情報を発信する企業がより評価されています。
また、検索結果のリッチ化により、単に検索順位を高めるだけでなく、検索結果という面の中でいかに存在感(プレゼンス)を発揮するかが重要となっています。
今まで以上に、検索ユーザーの体験をより良いものにするサイト・ページ・コンテンツが評価されていきます。
大切なことは、Googleを攻略するという考えではなく、「Googleと一緒に良質な検索結果をつくり、検索ユーザーにとっての利便性を実現していく」という意識をもつことです。
また、多くの分野でコモディティ化が進む中、指名検索につながるブランディングも引き続き重要です。
ウィズコロナの中、信頼できる企業やブランドがますます選ばれていくでしょう。
そのためには、利己的で打算的な考え方ではなく、利他的な思考をもち、人に寄り添い優しく頼もしいサイトを運用することが大切です。
ヘイショー 氏(heyshow.com 運営者)
ヘイショー(Heysho)です。個人ブログ でSEO、デジタルマーケティング、業務効率化などの情報を発信しています。仕事は東京の外資系企業でSEO/コンテンツチームのマネージャーをしています。得意分野はSEO、UXリサーチ、Web制作、ブログ、Google Analytics、NotionやMicrosoft Teamsを使ってチームのノウハウを一元化&クラウド化することなど。2012年からWebの仕事を続けています。
ここ2年はGoogleのアルゴリズムが有名ブランドを優遇したため、企業サイトの検索順位は上昇傾向にあります。あとインハウスSEO担当は業務範囲が広くなりました。例えば、サイト高速化、ローカルSEO、SERP SEO、Google Discover対策、UX/PR/ブランディングチームと連携する、など。あと個人サイトでは、アフィリエイターが激減しました。
2021年の注目はCore Web VitalsとBertアップデートです。ただ今後ともSEOの本質は変わらないと思います。SEOの本質は「ターゲットユーザーに対して、製品購入までの検索エンジンに関わるプロセスで最高のUXを提供すること」と定義しています。
一番の違いは日本語は同義語が多いことです。だからSEOツールの検索ボリュームをただと目安と考えて、サジェストや関連キーワードを割と重視する人が多いです。あと被リンク構築は難易度が高いです。メールだけだと大体無視されますが、直接会うとあっさりリンクを付けてくれたりします。最後に日本語サイトやブログ記事はデザインが独特ですね。
特にYMYL(Your-Money-or-Your-Life)型のサイトにおいて、多くの専門家がE-A-T(専門性、権威性、信頼性)の大切さに言及しています。2021年には、E-A-Tの概念がより幅広いジャンルのサイトに拡大していく可能性があります。
さらに、Googleが5月に導入を予定しているコアウェブバイタルを中心に、ウェブサイトのパフォーマンスが話題になるでしょう。ウェブサイトの担当者にとって、いかにサイトを高速化できるかが重要になるはずです。
日本語SEOの専門家の多くは、Googleのアルゴリズムに焦点を当てるよりも、コンテンツとユーザーエクスペリエンス(UX)に焦点を当てた方が良いという意見に同意しています。情報の正確さと、それがユーザーにとっていかに快適に表示されるかが、重要なランキング要因になるというわけです。
これもほとんどの専門家が同意していますが、SEOの基本的な仕組みは日本語でも英語でも同じです。その一方で、顧客があなたのサイトに求める内容や、表現方法、ビジネス文化には根本的な違いがあるため、必要なコンテンツは異なります。
個々の専門家の回答では、実例を交えつつ具体的に解説していただきました。日本市場に参入する場合は、日本語に特化したSEO戦略が必要になりそうです。
Jeff Crawford is a Digital Marketing expert, technologist and Manager. He has worked for technology companies in Silicon Valley such as Apple, WebTV and Microsoft. He has lived in Tokyo Japan since 2004, working for companies such as Microsoft KK and Adobe Systems Japan. Jeff is founder of Zo Digital Japan, an SEO and Digital Marketing agency based in Tokyo. Jeff started the Tokyo Digital Marketers Meetup in 2016, which now has over 2000 members. He has also presented about Digital Marketing at such events as Ad-Tech Tokyo, WordCamp Tokyo, Japan Market Expansion Competition (JMEC), and the Japan Association of Translators (JAT).